共同浄化槽の管理組合について

 

 地縁団体とは、こちらのページで述べた通り一般的な町内会・自治会といった名称で活動する地域の団体を指し、認可を受けられるのも原則としてこのような団体に限られます。スポーツ活動や美化活動だけをやっている団体では仮に地域的な団体でも認可されることはないと思われます。

 

 ところで、下水道が未整備の地域のは以下のような汚水処理をしています。

①個別浄化槽(各家庭の敷地地下に埋設。処理後は側溝等に排水。)

 ・単独浄化槽(トイレ汚水のみ処理。現在では新設不可。)

 ・合併浄化槽(トイレ、風呂、台所の生活排水をすべて処理。)

②共同浄化槽(各家庭から施設まで地中配管で集合させ、施設で一括して処理。)

 このうち、②のケースは一定の地域が共同で施設を利用しており、浄化槽施設及びその敷地を実質的に所有ないし管理し、維持管理のための費用を会費として管理組合に納めています。この場合、浄化槽施設の敷地について登記をしたくても管理組合は法人ではないため団体名義の登記はできません。では、このような管理組合は法人化の認可を受けられるのでしょうか。

 

 既存の地縁団体と浄化槽利用区域が完全に一致していれば、既存の地縁団体(一般的な町内会活動をしていて、認可の要件を充たしていることが前提)について認可申請すれば特に問題はありません。公民館その他の公共的な施設とともに法人化後に団体名義で登記すればよいでしょう。

 問題は、既存の地縁団体の区域の一部分だけで浄化槽を利用しているケースです。この場合も、団体は1つで浄化槽の維持管理活動も既存の地縁団体で一括して会計その他の処理をしていれば、既存の地縁団体を法人化すれば問題は解決すると思われます。しかし、共同浄化槽を利用している地域の多くは、既存の地縁団体とは別に管理組合のような団体を作り、浄化槽の維持管理は浄化槽利用世帯のみでしているようです。

 

 このとき、浄化槽の管理組合として浄化槽敷地を団体名義で登記をしたい場合にはどうしたらよいでしょうか。以下のような方策が考えられます。

 

方策① X管理組合の浄化槽の維持管理活動を既存の地縁団体(A町内会)の事務に組み込む。

 A町内会という団体の中で浄化槽の維持管理活動もすることにし(会計を合わせる)、そのうえでA町内会を法人化することができれば、A町内会について認可の要件が充たされていればすぐにでも認可申請ができます。この方策では、X管理組合としての実情をA町内会の役員、住民によく理解してもらえるよう説明してください。

 なお、X管理組合の区域がA町内会とB町内会にまたがっているような場合には、話が複雑になりすぎるためこの方策は採用できません。

 

方策② X管理組合を単独で法人化する旨の認可申請をする。

 X管理組合を単独で法人化するということも考えられます。当事務所が過去に受けた依頼で共同浄化槽の敷地を団体名義で登記したいというものが1件ありましたが、最終的にはこの方策により解決しました。

 共同浄化槽の管理組合の多くは、管理組合としては管理費の徴収、水質管理会社との委託契約、浄化槽施設の補修といった活動に特化していて、一般的な地域活動は別に町内会の構成員としてしているというケースがほとんどです。そのため、この方策を採用するためには上に挙げたような浄化槽の維持管理活動だけではなく、X管理組合として一般的な地縁団体と同じような活動をする必要があります。強調させていただきましたが、町内会と区域が重複していたとしても、A町内会の活動としてではなく、X管理組合として他の地縁団体と同じような活動をすることが認可の要件になります。

 例えば、A町内会の一斉清掃とは別の日にX管理組合の区域内の一斉清掃をする、浄化槽敷地やX管理組合の区域内に独自に花木を植えて継続して管理する、浄化槽壁面にX管理組合の区域内の子供たちに絵を描かせるなどの活動が求められます。

 上に挙げた例は、当事務所が受けた依頼で行政の担当者と住民の皆様の意見を擦り合わせた結果、これぐらいの活動をするということで決まったものです。一般の地縁団体と比べると活動内容も規模が小さいものではありますが、窓口の方にも管理組合の実情をよく理解していただいて、妥協点を提示してもらえたという案件でした。

 現在、藤枝市と島田市においてはこのようなケースで認可の前例があるという確認が取れていますが、他の市町村についてはまた取扱いが異なることもあるかもしれませんので、行政の担当者または行政書士事務所にお問い合わせください。

 もうひとつ、この方策を採用するにあたり注意すべき点は、X管理組合として上の例のような活動をすることで認可できそうだとなった場合でも、これまではX管理組合としてこのような活動をしてはいなかったということです。こちらのページの実質的要件の①にありますように、「現にその活動を行っていると認められること」ということが要件になりますので、少なくとも2年は上の例のような活動を継続して初めて認可の要件を充たすということになります。これは、X管理組合が発足から40年であったとしても、活動実績は行政との合意がおおむねまとまり活動を始めた時点が1年目となるということです。

 このあたりは地方自治法が要請するところですのでご理解ください。

 

方策③ X管理組合を単独で団地管理組合法人とする。

 地縁団体の法人化については、地方自治法第260条の2から第260条の40が根拠条文となりますが、他の法令の定めによる法人を作ることもできます。極端なことを言うと、X管理組合を株式会社や合同会社にすることでも、団体名義で不動産を登記するという問題は解決されますが、税金の面でデメリットが大きいため得策ではないでしょう。他にNPO法人や一般社団法人にするということも考えられ、実際に前例が増えてきているようです。ただ、これらの法人は税金面で一定の減免措置を受けられることがあるものの、共同浄化槽の管理組合の法人化というケースでは法人設立までのハードルが若干高いように思えます。

 そこで、このケースの方策として考えられるのは団地管理組合法人とすることです。この法人の根拠法令は区分所有法で、元々はマンションやアパートなどの集合住宅を想定して作られた法律ですが、後の改正により団地関係も取り込み第2章(第65条から第70まで)として規定されました。この第2章の規定もメインとしては1つの敷地に数棟のマンションを建設したようなケースが想定されていますが、立体的な集合住宅を含まないまったくの平面的な団地も対象とされています。そのため、共同浄化槽の管理組合を団地管理組合法人とすることもできます。

 方策②の認可地縁団体を設立するのと方策③の団地管理組合法人を設立するのではどのような違いがあるでしょうか。

  認可地縁団体 団地管理組合法人
根拠法令

地方自治法(第260条の2から

第260条の40まで)

区分所有法第2章(第65条から

第70条まで)

ただし、第1章の条文の多くを準

用する。

設立の窓口 市区町村役場 法務局
法人の対抗要件(※) 市区町村長による認可の告示 法人登記
不動産登記など どちらも団体名義での登記が可能
税金 おおむね差はない
団体の活動

他の一般的な地縁団体に準じた

活動をすることが必要となる。

団体が実質的に所有する施設の

維持管理活動のみでよい。

団体の運営(総会など)

規約に従ったしっかりとした運営

は必要だが、法令の根拠条文が

少ないこともあり自由度において

若干勝る。(あまりに不適切だと

認可の取消しはあり得る)

根拠条文は区分所有法の大部分

にまたがるため、運営の厳格さは

かなり高い。不適切な運営に対す

る罰則規定も多くあるため、高い

レベルでの留意が必要となる。


 上の表のうち「団体の活動」と「団体の運営(総会など)」に2つの法人の違いが見られるのではないでしょうか。

 認可地縁団体は団体としての活動のハードルが高い反面、その他の運営については比較的ハードルが低いといえます。それでも、規約を無視した運営をすれば団体の内部でトラブルも起きるでしょうし、そうなれば活動にも支障が出て認可の要件を維持できないくることもありますのでご注意ください。

 他方で、団地管理組合法人は団体としての活動のハードルは低い反面、運営についてはかなり厳格です。施設の維持管理活動の他に活動をして余分な費用、労力を負担したくない場合には団地管理組合法人がお勧めですが、運営については常に専門家のアドバイスが必要となるかもしれません。また、何か困りごとがあった時に役所へ相談するという場合、団地管理組合法人だと市区町村役場は直接的な窓口ではないため、自治体によっては相談しにくいという可能性もあるかもしれません。