認可地縁団体の不動産登記の特例

 

 平成3年の地方自治法改正により認可地縁団体という制度が創設され、従来の不都合性は大幅に改善されました。名目的な登記名義人に相続が生じてトラブルが起こるということもなくなりましたし、代表者の交代があるごとに登記を移転して合計数十万円にもなる登録免許税や司法書士事務所の報酬という出費をすることもなくなりました。

 

 しかし、名目的な登記名義人が町内会の構成員として今も所属していれば(あるいは名義人である外部の不動産会社の所在がわかっていれば)、法人化後に登記申請をすれば問題は解決しますが、登記名義人の所在がわからなくなっているというケースもあります。

 不動産の移転登記は、登記義務者(売主など現在の登記関係者)と登記権利者(買主など新しく名義人になるべき人・法人)とが共同して申請しなければなりません(不動産登記法第60条)。登記義務者の所在がわからなければ移転登記できないということです。

 これではせっかく認可地縁団体という制度を使って地縁団体を法人化しても、団体名義の不動産登記をするという目的を果たせません。

 

 この問題は、町内会の発足から50年以上経過しているような団体ではとても複雑な話になってきます。

 当初の登記名義が共有の形を取っていて、さらには2回、3回と相続を繰り返しているようなケースだと、現在の登記関係者は数十人、多ければ100人を超えるようなことも考えられます。こうなってしまうと、所在がわからない登記関係者をすべて探し出して登記申請するということは不可能ですし、できたとしても過分な費用を要することは明らかです。

 

 そこで、このような問題を克服するために平成27年4月から施行されたのが、認可地縁団体の不動産登記の特例です。

 地方自治法第260条の38第1項で特例の要件が、同条第2項から第5項で特例の手続きが、第260条の39で特例の効果が定められています。

 

 このようなお困りごとを抱えている地縁団体の役員様は、行政の窓口または行政書士事務所にご相談ください。当事務所にご相談いただける場合には、案件の性質上、報酬額を定型的に事前提示することが難しいため、お話を伺ったうえで、適切な解決策のご提案と報酬額のお見積りをさせていただきます。

 

 また、公共的な施設を保有していたり、保有する予定の地縁団体は、今は法人化さえすれば後の登記申請は簡単に行えるという状況でも、年月の経過に伴い本項のような問題が生じたり、複雑化する可能性を持っています。法人化の検討、実施は、話が簡単なうちに早めにされることをお勧めします。